ハイモジモジ松岡

ハイモジモジの松岡です。

吉祥寺に事務所を移転したとき、不動産屋さんに「ここでお店を3年続けられたらこの先もやっていける」と言われました。お店じゃなくて会社だけれど、とにかく「3年は頑張ってね」と。

励まされたような、釘を刺されたような気持ちの中、とにかくこの街で会社を続けていくのだと帯を締めなおしましたっけ。

会社を設立して、まる8年。吉祥寺に拠点を移して7年。なんとか頑張れているのではないでしょうか。

ただ、こんな考え方もあります。糸井重里さんがよく引用される故・吉本隆明さんの言葉で「毎日、10年続けたらものになる」というもの。小説家でも靴屋さんでも、それを10年続けられたら一人前になれるのだと。

そう考えると、ハイモジモジはまだまだ一人前の会社ではないのかもしれません。半人前を過ぎたけれど、まだ一人前にはなれていない「0.8人前」。


LIST-IT
もともとハイモジモジは「リハビリ」で立ち上げた会社でした。

フリーランスのライターとして文章を書く仕事をしていた僕は、2009年のリーマンショックですべての仕事を失う事態に直面します。同業者ならみな戦友のようなまなざしで「分かるわあ」と肩を組んでくれると思うのですが、あのときは本当に仕事がありませんでした。

だって、僕に仕事を発注してくれていた企業の人たちが次々とリストラの憂き目に遭い、僕にとっての仕事の出所が消滅してしまったのですから。

それまでずっと右肩上がりで仕事を増やしてきた僕にとって「仕事を失う」という状況は初めて味わうものでした。それでも心の中では「いつか好転する」と楽観的でいましたが、心の中のさらに奥の方ではそれなりにダメージを受けていたのでしょう。だんだん体の調子が悪くなり、起き上がることもテレビを見たり本を読むこともできなくなって、カフカが変身させた虫のようにただ床の上を這いつくばっていました。

身体のどこそこに現れる痛みや不快感が消えず、その原因もはっきりせずにさまざまな病院をたらい回った挙句、最後にたどりついた診療所で「気持ちがおつかれです」と言われたときに、初めて気づかされましたね。「そっか、精神的に参ってたのか」って。自分としては明るく過ごしていたたつもりですけどね。


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そんな僕を見かねた妻が突然、こんなことを言い始めました。

「会社でも立ち上げれば?」

「ハイモジモジって名前の会社があったら面白いよね。僕は会社に勤めたことがないから知らないけれど、会社の人は電話を受けたら『はいもしもし』って、この先、何億回も言うわけでしょう。だったら『はいもしもし』が社名だったら6文字で済むやん。省エネ、省エネ。あと僕は文字を書く仕事をしてるから『もし』に『文字』をかけて、カタカナでハイモジモジ。ね、アホっぽいやろ」

そんな与太話を2年くらい前に思いつきで言っていたのを妻がよく覚えていて、ふと切り出してきたわけです。「今こそハイモジモジやれば?」と。

これは妻なりの気遣いでした。仕事がなくなって、やることがなくなって、それで体の調子が悪いなら、とにかく何かやることがあればいいんじゃないか。近くのTSUTAYAでアルバイトをするでも何でもいいと思うけど、無理なら会社でも作ればいいじゃん。登記の準備で書類をこしらえたりしているうちに元気になるんじゃないかって。そうは言われなかったけれど。

僕の頭は単純でした。会社を立ち上げて何をするかは分からないけれど、とにかく看板を掲げたら面白いことになるだろう。みんなにも「またあいつ面白そうなこと始めたな」って思ってもらえるかも。そうだ、あれもできる、これもできる。ちょっと友達に相談してみよう。もしもし、ひさしぶり、ちょっと相談があるんやけどさ。こんど会社を立ち上げることにしてさ、社名は「ハイモジモジ」って言うんやけど。アホっぽい名前やろ。


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もしも会社に勤めていたら独立に勇気と準備が必要だったでしょうけれど、幸い当時の僕はフリーライターで、どこかに所属していたわけでもなく、拘束される連載を持っていたわけでもなく、ただ書類を揃えて法務局に提出するだけでよかったわけです。ハードルが低かったのはラッキーでした。

そうして「株式会社ハイモジモジ代表取締役」という、何を代表し、何を取り締まっているのか自分でもよく分からない肩書をまとってからは、眠っていた地中から湧き出るようにいくつもアイデアが浮かんできました。そのたびに友達に相談したり、協力してくれそうな会社に企画書を持ち込んだりして、充実のときを過ごしていました。

おかげで元気になりました。妻のおかげでした。

結局、そのときに思いついたアイデアは何ひとつ実現しませんでしたが、会社を立ち上げる前に思いつき、趣味で妻にデザインしてもらっていた「LIST-IT」という腕に巻けるメモをハイモジモジの第一弾商品として発売することにしました。

文字に関することを企画する会社にするつもりだったけれど、「LIST-IT」もメモだし、字を書くし、ぎりぎりオッケーかな。遊びでデザインフェスタに出展したときに「これぜったい商品化した方がいいですよ」ってお客さんに声をかけられて、ほんとに完売したくらいだから、きっと需要はありそうだし。よし、こういうアイデア商品を形にして販売するメーカーとしてやっていくことにしよう。


LIST-IT
これが「ハイモジモジ」の始まりです。リハビリ的に立ち上がり、何をやるかは決まっておらず、理由を後づけしてメーカーとして歩み始めた、なんとも心もとない会社です。それが8年も続いてしまった奇跡

ここまで来たら10周年を目指したいです。10年続けられたら、一人前になれるかもしれませんしね。

設立当時はデザイナーとして企業に所属していた妻も半年後には「こっちの方が面白そうだから」とあっさり辞めて、予定していなかった「夫婦ユニット」を組むことになり、今に至ります。その間、たくさんの商品をデザインしてきましたし、子供も生まれてまた面白いことになりました。しばらくはこの体制のまま楽しみたいと思っています。

ここまで続けられたのは、僕たちの商品を面白いと思って買ってくださるみなさんのおかげです。そして、みなさんのおかげで、これからも続けていけそうです。いつもありがとうございます。

まだ0.8人前ですけれど、よろしければこれからも応援してくださいね。


LIST-IT

2018.4.28 by Atsushi Matsuoka

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